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犬山城天守は本当に新築か 美濃から移築主張の郷土史家に「援軍」

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木曽川沿いの丘陵に建つ国宝・犬山城天守=愛知県犬山市で2023年11月15日、立松勝撮影 拡大
木曽川沿いの丘陵に建つ国宝・犬山城天守=愛知県犬山市で2023年11月15日、立松勝撮影

 美濃金山城(岐阜県可児市)の天守が関ケ原の戦い(1600年)前後の時期に、犬山城(愛知県犬山市)へ移築されたとの伝承を「金山越(かねやまごし)」という。江戸時代の記録に残る金山越は、1960年代の国宝犬山城解体修理報告書で否定された。この報告書に疑問を持って研究してきたのが、可児市の郷土史家で医師の高木鋼太郎さん(74)だ。高木さんは「金山越の真相を解明することは、戦国時代の城郭史の謎をひも解く重要な意味を持つ」と語る。犬山城天守の創建を巡る研究を追跡した。【立松勝】

犬山城と美濃金山城跡 拡大
犬山城と美濃金山城跡

 金山城は木曽川の水運と東山道が通り、水陸交通の要衝に位置する。城は1565年、織田信長が美濃進攻の功労として家臣の森可成(よしなり)に与え、可成の子の長可(ながよし)、蘭丸(本能寺の変で討ち死に)、忠政と代々引き継がれた。忠政が関ケ原の戦い直前の1600年2月に信州・川中島へ国替えされると、城は犬山城主の石川光吉に与えられた。

 この経緯は、江戸時代の古記録「犬山里語記」に「慶長4(1599)年秋、徳川公は金山城主森忠政を信州川中島に転出させ、金山の城は壊し、天守、櫓、殿守及び諸士の居宅まで石川光吉に賜る。翌年夏、これを木曽川に下し、ことごとく犬山に遷(うつ)し、天守を建て、櫓(やぐら)を造り、城とする」と書かれている。高木さんは金山城を与えることで、家康が豊臣方の石川氏を味方に取り込もうと企てたとみる。

 金山城を解体した木材は木曽川で16キロ下流の犬山へ運ばれ、犬山城の天守として再建される。武家屋敷や城下町なども整備された。この「金山越」は、1665年ごろまでに尾張藩士・津田房勝によって書かれた「正事記」を初出とし、「犬山城主記」や「犬山里語記」など、江戸時代の文献によって伝承されてきた。これらの二次史料が通説となり、昭和初期の1935年、犬山城は日本最古の天守として国宝に指定された。

 しかし、金山越は1961~65年に行われた犬山城解体修理工事の報告書で否定される。名古屋工大の建築学者、城戸久氏(故人)が「1537年、織田信康により現在地に創建された」と結論づけ、「移築なら柱などにくぎ穴が2カ所以上あるはずだが、1カ所しかない」などと否定の理由が示された。

「金山越」を研究する郷土史家で医師の高木鋼太郎さん=岐阜県可児市で2023年11月12日、立松勝撮影 拡大
「金山越」を研究する郷土史家で医師の高木鋼太郎さん=岐阜県可児市で2023年11月12日、立松勝撮影

 この報告書に反論したのが元犬山市職員の郷土史家、横山住雄氏(故人)で、その研究を受け継いだのが高木さんだった。「城普請を手がける大名お抱えの大工職人であれば、古材を元通りに組み立てることは可能。江戸時代の多くの伝承記録があり、見直す必要がある」。高木さんは「犬山城創建の謎を検証する」と題した論文集を2018年に自費で発行。21年には血液がんの一種である悪性リンパ腫を発症し、現在は闘病しながら研究を続けている。

 犬山城の天守創建年代を巡っては、近年になって新たな説がもたらされた。21年3月、建築学者の麓和善・元名古屋工大教授と光谷拓実・奈良文化財研究所客員研究員の共同調査による「年輪年代法」で、犬山城天守の古材の伐採時期は1~2階の通し柱が1585年、3階床の梁(はり)が88年であることが分かった。その結果、麓氏は「1585~90年ごろに現在地に新築された」と新説を出し、小牧・長久手の戦い(1584年)の後、織田信雄方の3人の武将が犬山城主を入れ替わって務めた年代に継続して建設されたと結論づけた。

支持の学者 来月講演

 諸説について、犬山城を管理する公益財団法人・白帝文庫は「天守の創建時期はいくつかの説があり」としたうえで、「天正13(1585)~同18年ごろにかけて、1階から4階までが一連で建設されたとみられ、現存する天守の中では最も古い」などとパンフレットで紹介し、観光客に配布している。

 古材の年輪にみえる1585年から88年にかけては天正地震が中部地方を襲い、災害から復興する時期にあたる。「地震で壊れた金山城の天守を修理したのは森忠政。新しい木材で修復された天守は新築に近い建物となり、犬山城へ移築されたと考えるのは、伝承と合致する」と高木さん。しかし城郭史の検証は建築学、城郭史学、歴史学、城郭考古学などの分野によって見解が分かれることもあり、在野の郷土史家の持論は軽視されてきた。

 金山城跡は今年、国史跡指定10周年を迎え、可児市は城郭史学者の三浦正幸・広島大学名誉教授を12月3日に市に招き、「美濃金山城と犬山城天守」と題する講演会を開催する(参加申し込み終了)。

 三浦名誉教授はこれまでの著書などで犬山城天守の造りを「1階平面が極めて古式」と検証し、「金山城天守を移築改造したものである可能性は否定できない」と考察する。取材に「江戸時代の記録を否定する根拠はなく、講演会は『金山越』を肯定する内容になる」と話す。日本を代表する城郭史学者が、郷土史家の支援に乗り出した形だ。

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