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「廃炉先進国」イタリアが原発回帰 方向転換の背景とその矛盾

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カオルソ原発の原子炉建屋の最上階。燃料プールや使用済み核燃料などは既に撤去された=イタリア北部カオルソで2023年10月12日、宮川裕章撮影 拡大
カオルソ原発の原子炉建屋の最上階。燃料プールや使用済み核燃料などは既に撤去された=イタリア北部カオルソで2023年10月12日、宮川裕章撮影

 世界に先駆け1987年に脱原発を決めたイタリアは、国内4カ所の原発すべてを90年までに停止し、現在も廃炉作業が続く。そんな中、イタリア政府は2023年9月、原発新設のための議論を開始した。気候変動対策やエネルギー危機を背景にした動きだが、「廃炉先進国」であるイタリアの原発回帰は、順調に進むのだろうか。

 かつての原子炉建屋の最上階に上ると、ドーム状の天井が見えた。廃炉による解体物は撤去され、広い空間が広がる。「ここには燃料プールや使用済み核燃料がありました」。99年に廃炉管理のために設立された国営の原発管理会社「SOGIN」で放射線防護を担当するサブリナ・ロマーニ氏が説明する。

 イタリア北部、カオルソ原発。70年代に建設が始まり、81年12月に運転を開始した。860メガワットの出力は国内最大で、イタリアのエネルギー供給を担う沸騰水型の最新鋭炉として期待を集めた。だが5年後の86年に旧ソ連(現ウクライナ)でチェルノブイリ原発事故が発生。これを受け87年に実施された、事実上、原発の是非を問う国民投票で反対派が多数を占め、政府は脱原発を決めた。

 86年に燃料を充塡(じゅうてん)するため運転を停止していたカオルソ原発も90年、商業運転の停止が正式に決まった。環境基準への対応などから、カオルソ原発の解体が始まったのは10年後の00年。現在、作業の約5割が終わった段階だ。イタリア国内では4カ所の原発を含む9カ所の原子力関連施設の解体が進む。

イタリアの国旗=ゲッティ 拡大
イタリアの国旗=ゲッティ

再燃する原発再開議論

 日本と同様、エネルギー資源に乏しいイタリアの原子力政策は揺れてきた。脱原発を決めた国民投票以降、原発再開への動きが出たのは08年。電力価格の引き下げを掲げる当時のベルルスコーニ政権が原発再開計画を発表し、30年に電力の25%を原子力でまかなう目標を設定した。だが原発再開の是非を問う11年6月の国民投票の前に東京電力福島第1原発事故(同年3月)が起き、国民の94%が原発の再開に反対した。

 そして今、原発新設への議論が再燃している。メローニ首相率いる「イタリアの同胞」と「同盟」「フォルツァ・イタリア」の3党は23年5月、原発の活用を検討する動議を下院に提出し、可決された。50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロとする国家目標や、ロシアによるウクライナ侵攻がきっかけとなったエネルギー危機に対応するため、比較的安価で、発電時に二酸化炭素を排出しない原子力が必要との判断だ。

 イタリア政府は9月、原発再開に向けた政府の計画案を6カ月以内に策定し、7カ月以内にロードマップ、9カ月以内にガイドラインを作成する方針を示した。政府は世界的に開発が進む小型原子炉「小型モジュール炉(SMR)」の新設を検討している。

 だが一方で、イタリアでは核のごみを収容する国立中間貯蔵施設の建設はめどがたたず、廃炉作業で出る放射性廃棄物は行き場を失っている。その先の最終処分場の建設に向けた議論は始まってもいない。【カオルソ(イタリア北部)で宮川裕章】

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